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長編
シリアス・オリキャラ有り エドワードは一度覚醒したあとに、また眠ったとロイは医者に告げた。それを聞いた医者は今ロイが来た廊下を小走りで進んでいった。 ロイはその白衣をただ目で追った。 エドワードはしばらく会わないうちに、ずっと大人になっていたと思う。 大人気なかったのは自分以外に他ならなかった。 あれ以上あの場に留まっていると、色んなところから支障が出てくる。そして自分自身にも。 眠った、というよりも体力の失われたまま、再びゆっくりと気を失ったエドワードを残して、部屋を出た。 一度でも意識を回復したことは大きかった。 確かに生きていることを確かめた。エドワードはロイの願いに確かに答えた。 胸が締め付けられるような数時間が。心臓をわし掴みされていたような、嵐のような時間が終わろうとしていた。 * * * ロイはあれからすぐにあの場所から立ち去った。 ロイから意識回復の報告を聞いて、医者がしばらく再びつきっきりになったという。 しかしそれからはエドワードの意識は回復していないらしい。 ロイは司令部の馴染んだ椅子に座ってシーアールの報告書に目を通したが、そこにはエドワードが意識を戻したという一文は未だになかった。 それでも脈は安定してきたという。一時上がった熱も今は落ち着いていると。それだけでも少し安堵することができる。油断は禁物だけれど。 そんなシーアールの街の中において隔離された状態のエドワードとは異なる、外の世界。 外は主犯となる一団が全て身柄を拘束された。 供述はこれからだ。口をそう易々と割るとも思えない。それでもすべてはこれからだ。それは彼の仕事ではない。 軍がすべきことは、達成されつつある。 エドワードとローランドと。ファウツが課せられていたものは、一応の終わりを見たはずだった。 ファウツはもともとあの地区の駐在。最後まで仕事がある。そしてそのあとも。 ローランドは派遣された手前、まずは中央に戻っての報告になる。そのあとのことは、ロイの知るところではない。 中央に戻っての報告は、エドワードにとっても義務なのだが。 「中尉」 堪らずにホークアイを呼ぶ。もしも届いているならば彼女ならすぐに届けてくれると解っていても。 ここ数日の報告書は、ローランドがきちんとロイ宛にも送ってきていた。 そういう面はきちんとしている彼の性格が出ていた。事細かに纏められたポイントを抑えた読みやすい書類だった。 約束をたがえることなく、彼はロイとの個人的約束を守った。 本来なら、ありえないこのふたりのルートを。 派閥も枠組みも超えて。幾らあの状況といえどあの口約束をきちんと果たす軍人など、そうはいまい。 身分の低い者だったなら、自分を売るために動くこともあるだろう。 しかしローランドは既に派閥に入っているようなものだ。それを裏切る行為は、有り得ない。 例え部下のためとはいえ、あそこまで必死なロイの姿を見た、その後でも。 あの時は複数の人間にエドワードを救おうとするロイの姿を見られている。 多少の噂なり勝手に何かを想像する輩なりの声が聞こえてくるだろうと思っていた。こういうことには特に尾ひれはつくものだ。 現実に近しいところまで噂されるだろうと思っていた。 ロイの耳元まで届いてくれば、その元は可能な限り根絶やしにするか、それをかき消す何かを出して噂を上書きするつもりだったのだが。 しかし、今の所はあまり聞こえてこなかった。 自分の耳に届かないようにしているのかとも最初のうちは考えもしたが、こういう話の種はそう簡単に封じることは難しい。 部下は所詮捨て駒だと言い切る人物もいる。それでも自分は決してそうはなれない。否、ならない。 それでも見る者によっては異常とも取れる、その寸前のロイの行動に対してどう思ったかは解らない。 少なくとも全く気にならなかったということだけは、恐らくないだろう。それでも。 彼はそんな思いは二の次に、まだ若い軍属の錬金術師の命を守ろうとした、その事実だけを認めて。 例えどんな風に噂され吹聴されたところで、そんなことで自分を下げる結果にはさせないが。 そういう兆しがあれば、やはりそれを潰すだけのことだ。 しかしそのローランドは今丁度、中央に出向いている頃だ。 昨日はついにロイのもとに報告書は届かなかった。 ローランドからファウツに引き継ぎがあったかもしれないが、あちらの現状を考えればそうそう時間が取れないことは解らなくはない。 そうは思っても、しかし。 ドアの向こうに気配を感じてロイが視線を上げた。 ホークアイが戻ってきた。が、その手には何もなかった。少なくとも封筒は。 「その様子では、進んでないようですね」 「……無理を言うな」 「それでも、やっていただかなければ困るんです」 ホークアイの意見こそが正しいことは解るのだが。 ただこのあまりのローペースでやっていても結局絞まるのは自分の首だ。ロイは仕方なさそうに身近な書類に手を伸ばす。 「大佐!」 ホークアイの背後で勢いよくドアが開いた。 随分と走ってきたのか、ハボックは息を切らしている。 ロイはやっと手をつけた書類から視線だけを上げた。 「何だ」 ハボックは右手を上げた。 「シーアールからです」 ロイがガタリを音を立てて立ち上がる。 周囲の視線も一瞬ロイに向いたあと、ハボックに注がれた。 ロイはハボックから封筒を受け取るともどかしい気持ちで封を切る。 差出人は医者からで、中身はエドワードの状態の経緯を報告するものだった。 何故、一時間近くもこんな寒い季節に、しかも冷たい湖の中にいたエドワードが一命を取り留めたのか。 今では現地の軍人達もよかった、といいつつもよく助かったな、と言っているそうだが。 結果的にはあの低い水温によって助かったのだ。 風も冷たかったあの日の水温は恐らく10~15度程度だったと思われる。 エドワードの身体はあの水温によって冷やされ、発見されたときは仮死状態だった。 低体温状態だったあの時のエドワードは、脳が必要とする酸素の必要量が通常時に比べると少なくてよかった。 故に心肺機能が停止していた彼の身体も、温まれば蘇生する可能性があったということだ。 そしてそれが成功したということ。 今になれば、もう今回のことに関する彼の命の危険性は回避された。ロイは素直に医者に感謝する。 後は本人がこの場に来ることを待つだけだ。いつものように。 彼の意識が回復したという報告と共に。 この報告書が記されたのは一昨日の夜らしい。一昨日の夜中の状態までが記されていた。 専門的なことはさすがに解らないが、経緯として作成された看護記録は深夜まで記されていた。 発送されたのは昨日の朝らしい。 速達扱いになっていないことが忌々しかった。 それでも例え有能な軍人だったとしても、部下一人に終始つきっきりでいるわけにはいかない。それなりの地位にあるものだからこそ。 そして今回の状況の結果報告ということもあって、速達ではなく通常扱いで送ってきたらしかった。 それは医者の判断だったが、ロイとしてみれば些細な報告でもすぐに欲しかった。 少なくともこの書類はロイの心中を多少なりとも軽くしてくれる内容だっただけに。 この結果から考えれば、エドワードが再び意識を取り戻すのはそう遠くないと考えてもおかしくないはずだからだ。 感謝の気持ちと報告の遅さに複雑な気分だった。 一通り目を通して、やっとその報告書から目を離すと目の前にいる部下達の視線がロイを捕らえていた。 「大丈夫なんスか?大将」 「ああ。この報告書が書かれた時点ではまだ意識は戻っていなかったようだがな」 「よかったですね」 柔らかい表情でホークアイがいう。 誰だって仲間が傷つくのは見たくない。ここにいる者は身近な者を突然失うことを知っている。 例え彼が自ら納得した上で軍属になったとわかっていても、彼までがそんな結果を辿ることは誰も望んではいない。 「鋼のは最後の最後で詰めが甘かったということだろう」 「うわ、それを大佐がいいますか」 「……何だ」 「俺の後輩が数年前から軍に所属してんスけど、今回、というわけです」 ロイは眉を少し上げてハボックを見上げた。 ハボックは半ば呆れて笑うような表情だった。それは失笑ではなく、不器用な上司に対する部下なりの理解のうえ。 「よくやってたんでしょ?大将」 「結局一番負傷したのが自分だしなあ」 軍が負った被害など、大したものではない。 この程度の後始末なら、自分がやってやれる。特に問題も無いだろう。 きっと彼は、上司が負う後始末のことも考えていたに違いない。 あの場にいた全ての人物のためにも被害を最小限に抑えることは常に彼の念頭にあっただろう。 どう見ても、軍人としては不向きな眩しい少年。 彼にこの道を示したことをよしとするか、そうではないのか、今でも時々考える。 けれど、自分の前に姿を現すたびに、そんな思いも容易く消える。 自分も所詮やはりただの人間なのだと、ただ気付かされるだけ。 「鋼のは、よくやったさ」 ロイは報告書をしまうと手をつけようとしていた書類に再び触る。それぞれ、誰でもやるべきことがある。 あのとき、短時間でもこの場から出してくれた部下に感謝しよう。 シーアールに行く理由を作ってくれた彼らに。 そしてロイはいつものようにこの場所で夕暮れを見る。 今日ももう終わる。 そしてまた、朝を迎える。 PR |
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