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長編
シリアス・オリキャラ有り



 長く、こんな感じが続いていると思った。

 さっきまで何をしていたか、はっきりと思い出せない。

 少し考えようとしてみたが、思考回路がうまく働かずにすぐにやめた。

 それすらも、もう億劫だった。

 空を泳いでいるような気分だ。身体が軽い。そのまま身を任せているのが一番楽だった。

 気がつくと、近くにアルフォンスがいなかった。


「アル?」


 呼びかけてみたけれど、返事はいつまで経ってもなかった。

 ああ、今は自分は大佐のところへ行こうとしていたんだっけ。

 なら、近くにいるのかと思ったが、ロイの姿もない。


「あれ……」


 どうしようとしていたんだっけ。

 何をしようとしていたんだっけ。

 何でこんなに思い出せない?

 誰も居ない世界。

 ああ、自分はこんな感覚を知っている。

 現実であって、現実で無い世界。


『鋼の』

「……大、佐」


 呼ばれたと思った。

 何となく手を伸ばそうとして、それが叶わないことにやっと気付く。

 ああ、左腕は怪我を負っていて上手く動かせなかったんだった。

 そう思って機械鎧の右腕を差し出そうとしたが、それも叶わなかった。

 こっちは全く微動だにしなかった。

 なに、と思って視線を移したが、結局それ以上のことは何もできず。

 視界が揺らめく。

 蒼い蒼い世界で。

 広い世界の、たった小さな自分の存在。

 小さすぎて世界に溶けてしまいそうな。

 手足ももう動かせず。視界ももう何を捉えているか解らずに。自身も世界の小さな一部としてただ揺らめいているだけ。

 ただ浮かぶのは、弟と、あと。

 深く深く沈んでいく。

 その大きな世界に、「生きる」という意志を巻き取られていく。

 ただ命を落とすのなら、せめて弟にあげたいのに、とすら、もう思考は巡らない。

 やがて黄金色の太陽の欠片のような瞳の力は失われ。

 色を失い。

 意識を、力を、生きる鼓動を絡め取られて。

 墜ちて。

 静かにただ、眠りつく。


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