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長編
シリアス・オリキャラ有り 予想しなかった。 正確に言えば、予想は不可能ではなかった。予測しなくてはならなかった。 最後の最後まで、思考を断ち切ってはならなかったのに。断ち切ってはいなかったが、気を緩めてはならなかったのに。 その場の誰もが、突然の大きな音に、視線を動かした。 それと同時に、低く笑う声がした。 「はは…あはははは」 「何だ、何をした!?」 「ははは、これだから軍なんて大したことないって言われんだ!」 エドワードの背後にいる、自由を奪われて拘束されたテロリストは不穏に笑った。 「全部消えちまえ!」 同時に。 ――ドォン! 激しい音が響き渡った。 完全な失態だった。 エドワードがこの人物のことを突き止めたときには、すでに仕込みを終えていた。 建物の周囲で立て続けに爆発が起こった。 「全部!全部ぶっ壊れりゃいい!沈んじまえっ」 「こ…の野郎ッ!」 エドワードは歩く補助をしてくれていた軍人を突き放すと、この場にいたテロリストの襟足を強引に自分に引き寄せた。 「ちゃんと調節しといてやったよ。街にはそんなにダメージはないだろうさ。多分な」 いつエドワードから拳を繰り出されるか分からない相手は、喉の奥で低く笑いながら言った。 「俺がここにいるのは、ある意味でハズレくじ引いたからだよ」 「どういう意味だ」 「こういう…ことだ」 相手が答えると同時に、ズン、と地響きがした。大きな音だ。身体が震える。 「!?」 「これが仕事なわけだよ。アンタが、俺の相手ってワケ」 エドワードが目を見開いた。 やっと意味が解ったのか、とそういう目で眼前の相手がこちらを見ていた。 「お前ッ…こんなことしたら、お前も…っ」 「まあ、そうだな。でも」 エドワードは相手のその目を見て、一層相手の胸倉を締めた。 これから起こることを全てわかっている、自分の結末を知っている冷たいその目がエドワードの腕を震わせる。 受け入れるのか。自分が決めたことでもないその暴力的な結末を。甘んじて受けるのか。 この場で生きているのに。 「そんなことアンタに心配されることじゃねえ。俺はこのために来たって言ったろ?ここで死ぬのは俺の意思だ」 周囲は、やっと収まりかけた状況での大音声にやや混乱していた。 エドワード自身は、やや離れたところから見ているが、ローランドやファウツ、そしてロイが統率しているのが分かった。 ロイの声の前では、ローランドもファウツもただ従うしかない。 それが的確であるから、尚更だったが。 それが、認識できた光景だった。 次には、世界が踊った。 何を見ているのだろう。 湖か?空か?相手か?事態が収束しかけている眼前の光景か。 既に理解は不可能だった。 足元が、崩壊した。 テロリストが、失敗したときのために仕掛けた爆弾だった。 軍の緊急司令部を丸ごと破壊するつもりだったのだ。 結局はそれは不可能に終わったが、少しずつだが確実に仕込まれていた爆弾が一斉に爆発した。 完全破壊が不発に終わっても、このまま行けば、半分くらいは達成される。 それは、敵の上の人物を屠ることだ。 エドワードは建物の裏、崖に近い所にいる。 まともに立っていられなかった。 「う…わっ」 よろめいただけで終われば良かった。 しかし、もろい地面は、耐え切ることが出来なかった。その衝撃に。 「ウアアッ!」 完全に足場が奪われた瞬間だった。 大きな崩壊音に、その場に居た全ての視線が瞬時に注がれた。 見えたのは、崖崩れと、それに飲まれたエドワードの姿。 次の瞬間には、その場からエドワードの姿は失われた。 エドワードの透きとおるような金色の髪が、太陽に溶けた。 その軍服が、空に溶けた。 「鋼の!」 思わずロイは叫んだが、叫びに対する返答は戻っては来なかった。 ロイの叫びはただ空に消えた。 「っ…少佐!」 ファウツは思わず駆け出す。 しかし、それをローランドが阻んだ。 「!?何をっ」 「危険だ!君までが巻き込まれたらどうする!」 「しかし、少佐がっ」 「分かっている!」 ローランドの荒い声に、ファウツは思わず閉口した。 初めてだった。感情がこれほど露に口調に現れるのは。 しかし、そんな二人の横をロイが走りぬけた。 「マ、マスタング大佐!?」 「危険です!」 「そんなことは分かっている!」 寄れるだけ、近寄ってみた。 エドワード達がいた場所は、えぐられるようになくなっていた。 すぐ下には、冷たい冷たい水を湛えた湖。 「…!」 ロイは、拳を強く握った。 「負傷者は順次応急処置!応急処置担当は人数と負傷レベルを報告!後は捕らえたテロリストの把握、報告!及びエルリック少佐の捜索!」 ただし、動けるもの全員が行っても統率が取りにくい。 泳げるもので、負傷レベルの低い者を選出する。 「湖なのは、まずい。少佐は水面に浮かんでは来られない」 「っ」 意識があれば。湖底がさほど深くなければ、錬金術で身体を水面近くまで押し上げることは可能かもしれない。 しかし、すでに意識を失ってしまっていたら。 機械鎧の重さの分、湖底に沈んでいる可能性が高い。 くわえて水温の低さがある。 「何か発見があれば直ちに報告しろ!」 「大佐。私も行きます」 志願したのはローランドだった。 「大尉…!?」 「申し訳ありませんが、この場はファウツ中尉と、出来ましたらマスタング大佐にお願いしたく」 「…」 「お願いいたします」 「…分かった」 ロイは静かに、なるべく冷静に答えた。 「捜索隊を任せる」 「了解いたしました」 敬礼をすると、ローランドはすぐさま緊急にチームを作り、すぐに行動に移した。 崖を降りる間際、すれ違うファウツに一言残して。 頼む、と。 少佐は必ず連れて帰ってくると。 「大尉…」 その背中を、ファウツは目で追うことしか出来なかった。 後は、祈り。 「鋼の…」 ロイから零れた小さなつぶやき。 今の今まで目の前にいたのに。 今だって近くに居るはずなのに、こんなにも遠く感じるのは、何故。 どんなに手を伸ばしても、届かないなんて。 どんなに叫んでも、届かないなんて。 早く、戻って来い、この場に。 PR |
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