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短編
Plus d’actes et moins de paroles.(プリュス ダクト エ モワン ドゥ パロール) Plus d'actes et moins de paroles. = 行動を、より多く。口数を、より少なく。(フランス語) 口先でばかりものを言っていても、何も始まらない。 歩いて。走って。つまずいて。立ち上がって。行動すること。 動いて。そうすれば、きっと。何かひらける。きっと。 い、一応イメージとしてはピュア~な感じで… 今更ながらに思ってみた。 自分の立場は、錬金術師。 肩書き上、国家錬金術師。 必要な場合は、後者を言う。 しかし、何をやっているのかと聞かれたなら、前者でも充分。 ただ、自分の場合は、名を名乗れば、相手のほうが勝手に納得してくれるだけのこと。 いちいち言わなくても、その名を聞けば大体の人が「ああ、こいつは国家錬金術師だ」と言ってくれる。 それはそれで、楽でもあり、時には便利もであり、ある意味時々迷惑にもなるかという程度で。 それでもそれは、必要な名前で。 今は、まだ。 その国家錬金術師が所属しているのが、アメストリス国軍。 軍事国家のこの国の、大総統直属の機関。 この年齢にしては、文字面だけは上等。 所詮狗だ。 鎖をつけても自由になるだけ、まだいい方。 呼ばれるまで。 鎖を引っ張られて呼び出される前に食いちぎればいい。 その方法を探してるのだから。 食いちぎれなくなる前に。 飼い殺されるその前に。 そんな自分の飼い主は、いつも忙しいのか忙しくないのか分からない。 基本的に多忙なはずなのだが。 そう見えないのは、見せないようにしているのか、事実そうなのか。 それは自分には考えあぐねるところだ。 どうにも逃げているようにしか見えないが。 大元の飼い主と、細々と(と本人が言うが、とてもそうは思えない)直接手を出してくる飼い主。 たまには帰らないとと思って(と表上言い聞かせて)司令部に来てみたら。 当の本人は大元の飼い主に拘束されていた。 別に本人の予定を事前に聞いていたわけでもないし、連絡を入れたわけでもない。 来てみたら、いつものようにどっかりと座っているかな、くらいにしか思わずに。 冷静に考えれみれば、会議が立て込んでいるのが普通なのではないだろうか。 そして、何故いつも書類はおかしいとはっきりと思えるほどに積まれているのだろうか。 いつ見ても枚数を数えるのは絶対に嫌だというくらい、ある。 毎回見ているこの山は、実は手を付けられずにそのままになってるんじゃないだろうかと思いたくなる。 実際は、有能な副官がいるわけだから、ペンを折ってしまいそうな状況下で処理しているのだろう。 今の状況は結構深刻らしい。 しばらくオフィス内にいたが、残業を黙々とこなす姿をただじっと見ているだけの状態に辛くなり、廊下に出ていた。 廊下は当然、オフィス内より寒い。だがいたところで手伝えはしないし、ただいるのには気が引けた。 今日は弟は一緒には居ない。別行動だった。 突然の思いもよらなかった時間のつぶし方に困った。 「鋼の」 「…よぉ大佐」 ふいにやや明るいと思われる声がして、エドワードは振り返って答えた。 やっと堅苦しい(らしい)場所から開放されたロイが、こっちに向かっていた。 「いつ、到着したのかね?」 「さっき」 「…そうか」 エドワードのシンプルな言葉に、ロイが笑った。 実際到着した時間なんて何時でも構わないじゃないか。 今、ここにいるんだから。 「外はどうだね?」 「寒い。ホント寒い」 「雪か?」 「うん。積もってる」 エドワードはロイの横を通り過ぎる。 そしてたった今ロイが通った窓に手を当てた。 やや曇った窓を、軽くこする。 エドワードの手によって一部だけ、外の景色が見やすくなる。 その隙間から外の様子を見てみると、うっすらと白くなった景色が見えた。 「通りで寒いわけだな」 「大佐はまだまだ本日のスケジュールが残ってるよーで?」 エドワードから、あまり思い出したくなかった現実を突きつけられて、ロイはやや顔をしかめた。 「…大佐、だからな」 「…つか、ロイ・マスタングだから、じゃねえの?」 自分の後ろにいるロイに、肩越しにそう言葉を投げた。 「…どういう意味だね」 「どうもこうも。言葉のまんまだけど?」 エドワードはやっと振り返って、ロイを見上げた。 (やっと見えた) いのちのほのお。 (たまには言葉も必要だ) そう思う。 でも、それよりも早く。 自分自身が動かなければ、言葉すら届かない。 冷たい。 冷たい。 「大佐?」 二人の目に、色が戻った。 姿はないが、ロイを呼ぶ副官の声。 どさりという、重い音。 その音は、聞こえると同時に事実ロイの背に乗ったも同然だった。 近くのドアが開く。 「お疲れ様です、大佐」 「ああ、遅くまですまないな、ホークアイ中尉」 いつもいつも労いの言葉は同じ。 同じだが、意味がこもっていることをホークアイは理解している。 「こちらに積んであるものだけは、何とか終わらせてください」 ロイとエドワードがオフィス内に足を踏み入れると、何とか整理を終えて、本日付のものが避けられていた。 いつもに比べれば、「まあ少ないか?」と言ってもいいかどうかという感じだった。 「これをやればいいんだな」 「はい。ただし」 「…何かあるのかね」 「明日は量はもっと多いです。通常よりもある、と思っていてください」 「……どういうことだね」 「本来今日までのものの一部で、何とか明日の昼までに完成させればいいものを避けましたので。そのおつもりでお願いします」 ロイは呆れるように笑った。 エドワードは、言葉がなかった。 ホークアイの笑みは、呆れもあったかもしれないが、優しかった。 「それは。感謝しよう」 ロイは諦めたように、いつもの席に腰を下ろした。 「…と、いうわけですまないな。鋼の」 「逃げてばっかりいるからこうなんだよ」 「逃げてばかりなどいないぞ」 「そう?」 ロイは仕方なさそうにため息をついた。 「…待ってて、いいんだよね?」 「どうぞ」 ロイの代わりにホークアイが答えた。 気が利くのがいいことなのかどうなのか。エドワードは内心ちょっと複雑ともいえる。 それでも、今更か、とも思う。 「でもオレ、ここにいない方がいいよな多分」 その言葉にロイは顔を上げた。まだ書類は手を付け始めたばかり。 「じゃあ、近くの使える部屋で待っていてもらってもいいかしら?」 「うん」 ホークアイの指示にすんなりと従うエドワードの姿に、少し悲しくもなるロイである。 この場にいてもらった方が気分はいいのだが、現状が現状だ。どうせ身動きも取れない。 考えた結果ここは諦めてとにかく目的を達成させるしかないという結論に至る。 「早めに済ますよ」 「頑張ってー」 「何だ、その言い方は」 「……お仕事大変だろーけど、頑張ってクダサイ」 ロイのペンを握る指に、力が入った。 * * * 「ここ…?」 明るい場所だった。 「今はちょっとした軽食堂…とまでは言えないけれど、休憩室と言ったところかしら。残業しているときに最近使っているの」 ここで待っていてね、とホークアイが言った。 ここにはお菓子があるし飲み物もある。ちょうどよいと思ったのだろう。 エドワードは素直にホークアイに礼を言った。 「家の食卓みたいなテーブルクロス」 「それは、物寂しいっていって他の人が用意したのよ」 「休憩する場所くらい、ちょっとは和やかなものを、ってところかな」 それは、司令部内の休憩室として許される範囲で。 小さい部屋に、数人がかけられる椅子。明るい緑色のテーブルクロス。 棚には、茶菓子。カウンターのようなスペースには、コーヒーメーカー。 小さな食卓のよう。 「司令部内に…変な感じ」 ホークアイが部屋を出て行く際に暖房を設定して行ってくれたため、やっと部屋が暖かくなり始めた。 エドワードはコーヒーを用意して、椅子に戻ろうとした。 そのときに発見したあるもの。 「何これ」 隅に追いやられていたそれをつかんで取り出す。 キャンドルだった。 「何で、こんなものがこんなところにあんだ?」 焔の錬金術師への嫌がらせだろうか。 しかしそんなことをここではさすがに出来ないだろう。 できるやつもいるかもしれないが。 赤いキャンドル。 エドワードは、マッチを発見すると、一本取り出して火をつけた。 小さく擦れる音がして、ジュッと小さな炎が生まれた。 揺らめいている。 エドワードはその生まれたばかりの火を、キャンドルへ移す。 火は二つに分かれるように、乗り移るように揺らめいて。 キャンドルに火が灯った。 これくらいの小さな火なら、優しい感じもする。 時と場所により。勢いも大きさも激しさも違う、生きているような火。 仕方ないから、今はこの小さな火にでも構ってもらおうか。 眠るつもりはないが、言葉を紡ぎたければ。聞きたければ。 行動するしかない。 まずはやるしかない。 オレに何か言いたければ、行動するしかないよ。 …なるべく待っているよ。今日くらいは。 熱そうな焔を。 こんな雪の夜には。 PR ![]() ![]() |
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