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長編
シリアス・オリキャラ有り エドワードの脚は、ウェインの家を出てからまっすぐ街を出ることはなかった。 アルフォンスは、兄がどこへ向かっているのか解らなかった。 解らなかったが、どこを目指しているのかは、すぐに気が付いた。 朝、エドワードが通ってきた道だ。 「本当に思ったより軍人の人たちいないね。圧制しているように見えるから?」 「まあ、そういう見た目のこともあるかもしれないな。そういうの、気にしそうだし。もともといいイメージなさそうだし」 街の住人たちに必要以上のことを押し付けている時点で充分圧制ととることは出来るのだが。 そしてそれをいい具合にいい訳にしている可能性もある。 どの程度見て行くかを考えていたのだが、考えの結果が出る前に、状況が変わる。 「君」 「ん?」 エドワードとアルフォンスが同時に振り返ると、そこには一人の軍人が立っていた。 憲兵ではない。 その軍服が証明している。 「この辺はあまり安全とは言えない。早く行きなさい」 背丈は百七十よりも少しありそうな、男。 「見ない顔だが」 「うん、たまたま昨日宿取っただけだから」 エドワードはそっけなく答えた。事実だ。ただ全てを口にしていないだけで。 「この街のことを知らないで来たのか?」 「ここに来る前はセントラルにいたから人並み程度には知ってたよ。でも野宿のが危ないだろ?」 エドワードの意見はもっともだった。 少年の手にはトランクが握られている。これから街を出るのだろうと気が付いた。 「じゃあ、早めにここを出るように。いいね」 「ああ。それにしても…あんまり軍人さんいないね」 エドワードはついでにそれとなく聞いてみる。 一応それとなく一般人ぽく振舞う。 「あまり軍人だらけでも威圧感があるだろう。それにある一部だけに集中していたら他が手薄に感じられる」 「ま、それは一理あるか」 その意見には納得しておく。 手本のような回答だ。 人の配置も立派な戦術のひとつに違いない。 後は、それが作戦通りに動くかどうかだ。それとともにその場の指揮官の動きによる。 「…兄さん」 「なんだよ?」 不意に声をかけてきたアルフォンスを見上げる。 「中尉さんだ」 「は?」 何が言いたかったのか、一瞬遅れてエドワードは気づく。 階級章である肩章を見ると、ホークアイと同じ肩章をしていた。 「あ」 「何だね?」 「あんたか。もともとこの街にいるっていう中尉って」 エドワードとアルフォンスは納得するが、当の中尉には訳が分からない。当然だ。 「そうだが。どこかで会ったかい?」 「いや、そういう訳じゃないけど…ほら、セントラルに居るときに耳にしたんだよ。な、アル」 「え?あ、うん」 慌て気味に答えたが、相手はすんなりとは納得できない様子だった。 まがりなりにも一将校である。 「あ、の。気分を害してしまったらすみません。随分大変みたいなので、どうなのかなと思って」 「そうそう。これだけ軍が動いてるなら、もうすぐ終わるかなと思ってさ」 終わらせたい気持ちは、この中尉には他の軍人以上にあるだろう。 街の人々の、この中尉に対する評価は悪くはなかった。それだけ長くこのシーアールを見てきたということに他ならない。 ただ、軍人として割り切れない面が大きいのかもしれないが。 「終わらせるためにやってるんだ。さあ、早く」 そう言って二人をその場から離れさせようとする。 「あ…」 本当はもう少し様子を知りたい。 しかしよりによってその中尉に会ってしまうとは。 いっそのこと名乗って直接聞いたほうがいい気さえする。 「ファウツ中尉!」 後方から声がかかった。 「居るのだろう?ファウツ中尉」 「はいっ」 はっきりとした口調の声に名を呼ばれたファウツは急いで踵を返して走り出した。 態度から、エドワードはすぐに悟る。 上官に呼ばれたのだ。 その姿は、二つ奥の建物に姿を消した。 残されたのは、二人だけ。 「…ちょっとだけ、いいよな?」 「いいよな、じゃなくて行くんでしょ。覗きはよくないよ兄さん」 「だって情報なきゃオレたちだって帰れないだろ?」 エドワードは足音を殺して裏道に回った。 さすがにその周辺は軍人も多い。 どうしようかと考えあぐねた。 結局は適当に柵越えでもするのが一番妥当そうだった。 それから、アルフォンスは待機をしてエドワードが潜入する。いつものパターンだ。 しかし、今回は何故か異様に間が悪かった。 柵越えをしたところまでは良かったが、その次の行動を起こす前に人が来たのだ。 行き場がなくなり、仕方なく何とか身を隠せる場所に身体を縮こませる。 「アル…狭…」 エドワードが小さな声で呻いた。 「し、仕方ないでしょ…何とか我慢してよ」 「んなこと…言って、も」 限界まで丸まっているが、痛い。 声が近くなった。 「状況は変わらないのか?」 「はい。第三小隊と第四小隊が動いていますが、報告はまだ…」 「そろそろ私が来て一ヶ月。上層部への報告の頃だ。何とか結果を出せ」 「はい」 エドワードとアルフォンスが顔を見合わせた。 目的の人物だ。 予想通り、派遣された当人も結果が出ずに地団太を踏んでいるといった状態だ。 そして報告を挙げるならばいい報告をしたい。当然だ。 エドワードでさえ良くない報告書なんて出したくない。 この場合、大尉とエドワードのその後は当然異なるが、エドワードの場合追加報告書を頼まれる可能性が高い。 それは絶対に阻止したいところだ。 というよりも絶対御免である。 その場合、ただ追加報告書を作るだけになるわけがないのだから。 巻き添えには絶対になりたくない。 「現地を押さえられないのか?」 「あちらも本陣ややはりメインとなる土地は厳重です。下手に手出しをすればこちら側も大きな痛手を被(こうむ)ります」 その上火薬の扱いになる。下手には動けない。 「私と一緒に来ている第二小隊を動かす」 「…分かりました。では、第三小隊を一度下がらせて」 「一日経ったらまた出るつもりでいるように指示しろ」 「一日、ですか。ですがそれでは」 「にらみ合いの期間はとっくに過ぎた。相手の出方は重要だが、後手に回る気はないからな」 ファウツの意見をぴしゃりと断ち切ってローランドが断言した。 「ここには遊びに来ているのではない。私たちはボランティアでもない。多少の犠牲はつきものだ」 深い茶色の、やや切れ長の瞳が、真っ直ぐにファウツを捉える。 「私は、軍人です。ここにいる者もそうです。しかし」 「犠牲のない戦争などあるわけがない」 ファウツの瞳が悲しそうに開いた。 現実はそうかもしれないが。 頭では分かっているはずが。 「優しいのは悪いことだとは思わない。しかし、その考えが、事態収縮を遅らせているのだと気づかないのか」 何故、大尉はここへわざわざやってきたのか。 それは、ファウツだけでは事態が変わらないからに他ならない。 そして、上官に意見することも、本来なら。 「第二小隊に召集をかけなさい。そして第三小隊は一時帰還するよう通達を出せ」 「はい」 ファウツはそれ以上意見することなく、敬礼するとすぐに走っていく。 時にその状況下においては、非常な命令もあるということ。 それ以上の悲劇を招かないためにも。 頭では理解できる世界。 そして、頭で理解できるうちは、通常の感覚を持っているとも言えた。 その姿を見送ったローランドは、ぽつりと声を出した。 「それで?そこにいる猫は、誰だ」 「!」 再びエドワードとアルフォンスが顔を見合わせた。 ばれている? 「白い毛並みはなかなか綺麗なようだな。赤い服を纏った白猫?」 「……」 白い猫。 赤い服を纏った。 「ばっ…アルっお前頭出てんだよ!」 「兄さんこそコートがはみ出しちゃってるじゃないか!」 一応小さな声で意見を言うものの、どちらにも反論する言葉はなかった。 逃げられはしない。 「…悪かったな」 仕方なくエドワードは立ち上がる。アルフォンスもである。 「二人か。どこから入った?」 「あのへんから、かな」 エドワードは指でやや先の壁を示した。 「ほう。余程躾がよかったのだろうな。ここがどこだか分かってるな?」 「一応」 「それでは、自分がこれからどうなるかも分かるな?」 「…いや?」 エドワードは短く答える。 「あの、すみませんボクたちは」 「不法侵入罪くらい分かるはずだ。その上軍の内部機密を聞いているのだ。言い逃れは出来ないぞ」 ローランドの意見は最もである。 エドワードはポケットに手を滑らせる。この場を穏便に済ませるには、最早これしかないと思ったからだ。 じゃらりと重い音をたてて、それは現れる。 「正面から入ってこなかったことは謝る。状況が状況だったんでね。そのことについては言い逃れしねえよ」 右手が掴んでいるそれを、ローランドに向けて見せた。 ローランドはそれに視線を落とした後、再びエドワードを見た。 「悪かったね、ローランド大尉」 「国家錬金術師」 そしてすぐに、ローランドは悟った。 来たのだ。大総統府直属の者が。 「すぐ、帰るから」 手の中の銀時計が光った。 PR |
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