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長編
シリアス・オリキャラ有り 昨日通った道を、二人は歩いていた。 結局は自分がシーアールに来ていたことがローランド側に分かってしまったが、それは向こうにとっても予想範囲内だった。 命の駆け引き。 安易には動けない。それは分かる。 ロイとて個人の意見としては多少なりとも分かっているはずだ。内乱の経験者故に。 イシュヴァールの英雄と言われる男。 つまりはそれだけのものを見て、今を生きていると言うこと。 「…くそ」 「兄さん?どうしたの?」 「報告書なんてとりあえず書いて発送手続きすればいい。けど」 そしてそのまま、自分たちは目的地へ行けると思うのか。 「…ホントに、はめられた…?」 今更ながらに思っても後の祭りだ。 あの状況では当然自分が手出し出来ることは、あったとしても限られている。 手を出せることがあったとしても、それを良く思わない人間もそれなりにいるだろう。 その上、駐在する軍には自分の身分が割れている。全員が知ってはいなくても、実質権限をもつ大尉が知っている。 動きにくいことこの上ない。 いつも言われてもその静止を聞かずに走り出す、本来のスタイルとは逆なのだ。 「戻れ、ってことかよ…」 こんなことを電話でロイに聞いてみたところで、 ――強制はしないがね。 とでも言われるのがオチだろう。 「オレの出す報告は…まあちっとしか知らねえけど、軍の配置とか陣とかあるだろ。易々と書面に起こして普通に送れるかよ」 「あ」 「軍直属の配達じゃなきゃ駄目だろ。機密文章だろこれ」 いつもと同じ感覚でいた。 だから、今回言われたことがどういうことなのかを深く考えないままでいたために気づくのが遅れた。 今回の場合は、いつもと同じでは駄目なのだ。 国家錬金術師の提出するレポートはそれなりに重要度はある。 国家資格を持つほどの研究者の研究資料なのだから、重要度を考えれば普通レベルでないというのは当然だ。 それは国家錬金術師に与えられている特権から見ても分かることだ。 しかし、今回は。 軍の重要機密事項。 その重要さ故に、通常の扱いにはならない書類なのだ。 つまり迂闊に書類を出せない。 通常一般企業でも、そういったものは配達記録がどうだとか、専用便があるだとか、さまざまある。 それが今回の場合は、軍内部のものである。 こういう類の送付ルートは決まっているはずだ。 ロイの行動から察するにせいぜいあて先はロイにしても許されるといった程度だろう。 恐らくは。本来ならばもっと別のあて先を書くべきなのだろうが、きっとロイは別にそれを求めてはいない。 だが当然のことながらそんな送付ルートなどをエドワードは知る由もない。 普段とは勝手が違うだけに困るのだ。 最初は普段と同じようなつもりでいた。 今振り返ってみれば過去にも機密を至って普通に、 せいぜい速達あたりで送っていたような気もするがそんな過去はもういい。少なくとも自分には。 知りたくなどないというのが本音だが、知らないのは正直今の段階として痛い。 ならば自分で手持ちで持っていくほうが確実だ。 どちらを選んだところで、明日の到着になる。この時間なら。 それに自力で持ち込まなかった場合、ロイではない、 他のエドワードにとってはどうでもいい左官やら将軍から何かを言われるのは御免だ。 なぜそれに気づかなかったのか。 それを悔やんでならなかった。 「見抜いてたんだ、大佐…」 「すごーく、むかつく…」 もともと送付で本当によければ、その手続きも済ませてその指示があの封筒に入っていたはずだから。 異様に手回しのいい封筒の中身だったが、唯一それだけが綺麗に抜け落ちていた。 待っているから、とでもいうように。 仕方なく、エドワードは行き先の列車の切符を取った。 * * * まだしばらく来る予定のなかった司令部に到着したのは、シーアールを発った翌日の午前中だった。 出発したのが午後で、しかも予定より遅れたためだ。 遅れた理由は単にあそこで会話をするはずではなかったからで。 さらに、ここへくる切符を取るはずでもなかったからだ。 つまり、司令部へ行くためのシーアール発のダイヤのチェックなんてしていなかったということだ。 アルフォンスの横では、仏頂面のエドワードが不満そうに歩いていた。 「もう、着いたんだからさ、いい加減その顔やめたら?」 「すっげー気持ちこもってるだろ?表情にっ」 「それは確かにそうだけどさ…よくないよその顔…」 アルフォンスは呆れたように言う。 嫌々戻ってきたエドワードだが、言葉とは裏腹に書類は列車内で完成させていた。 結局は大したことは書けない状況だったので、それほどの厚さも内容もない。 気分的には来週を乞うご期待。といったところで。 本心的には来週のことなんて書く気は毛頭ないが。 さっさと再び駅に戻るためにも早々に司令部を立ち去りたいところだ。 しかし、着いたオフィスをノックしてから入ると、肝心の策士の姿がなかった。 「こんちは…」 エドワードはロイ以外の人のために挨拶をする。 アルフォンスは、オフィスにいる全員に向けて。 「…あれ?」 いつもどっかりと座っているはずのロイの姿が綺麗にない。 「エドワード君、アルフォンス君」 「ホークアイ中尉。大佐は?」 無理やり呼び戻しておいて、不在とは。 「今は会議中なのよ。今日の予定だと…後、一時間位かかるかもしれないわね」 「えーっマジで?勘弁してくれよ…」 エドワードが呻る。 「あ、これさ、書類。機密になるだろうから持ってきたんだよ。中尉預かってくれる?」 「そのことなんだけれど」 「何?」 「大佐から、もしも今日エドワード君達がここへ来たら、待っているようにって言われているの」 「はあ?」 待っている必要なんてない。少なくとも自分にはない。 折角戻ってきてやったというのに。 「早く戻りたいんだけど。大佐の不手際でオレ達ここにわざわざ戻ってきたんだ」 「大佐の不手際って、兄さん…」 「何だよアル。間違ってないだろ?」 エドワードは受け取り手のない書類の入った封筒をひらつかせて不満を述べる。 のんびりロイを待っていることなどエドワードにはできない。 そのエドワードの性格を分かった上で敢えてロイはホークアイにこの指示を残した。 そのロイも、まさか会議に時間を食われるとは思っていなかっただけだった。 どうせそう時間のかからないうちに終了すると思っていたからだ。 そして追加の別の会議に出席しなければならないとは予想すらしていなかった。 それは、恐らく誰もが。 要するに緊急会議だった。 「中尉!動いたっスよ」 オフィスのドアが開くと同時に姿を見せたハボックの声がした。 「ハボック少尉?」 ハボックの手には数枚の紙があった。 資料不足故に簡単な報告しかなかった。 「大佐はあっち…じゃなくて会議継続でまだかかりますね。とりあえずこれ。配られたらしい資料の一部なんスけど」 ハボックが手に持っていた書類を手渡した。遠目から見たその紙には、それ程情報量はなさそうではあった。 ホークアイは素早くそれに目を通す。 表情が険しくなる。 「これ本当なの?」 「さあ。情報が錯綜してるのは事実なんで何とも。ただ、全くのデマじゃないとは思うっスよ」 「…あれだけ睨めっこしといていきなりこれかよ」 資料を盗み見るようにホークアイの後方から覗いたブレダが言葉を漏らす。 何か良くないことでも起きたのか。 少なくとも、そのホークアイの手に渡った資料の情報のせいでロイが今ここにいないのだろうということは分かる。 そして、口出しをする必要も、口を挟む理由もエドワード達にはない。 「大将」 慌てていたのか、やっとハボックはエドワード達に気づいたらしい。 「何か取り込んでるみてーだな。邪魔みたいだしやっぱり出直す」 「いや…悪いな」 短くエドワードの言葉に応えて、ハボックが脚を進めた。 「大佐に頼まれた奴、持ってきたのか?」 「そうだけど」 「俺が大佐に届ける。だから預かるよ」 「少尉が?」 エドワードが少しだけ顔をしかめた。 「大佐が必要としてるみたいだから」 「どういうこと?」 「言葉のまんま」 「少尉」 エドワードはその鋭い瞳でハボックを見上げる。 「他意はねえよ。ホントに言葉のまんまだ。大佐がもし大将が来てたら長い時間は待ってはくれないだろうから預かっとけって、俺に」」 「今取り込んでることと関係あんの?これが?」 エドワードは列車でまとめた書類の入った封筒を持ち上げる。 アルフォンスはやっと兄の変化に気づく。 何かを察した顔だ。 そして何を察したのかも、同時に予想できた。 「兄さん。…少尉。…ホークアイ中尉」 「…どういうことだ」 声は、喉の奥から搾り出されたようで。 低かった。 「どういうことだ」 聡明な子ども。 大人の優しい庇い立ては意味を成さない。 でももともと隠そうとしていたわけでもなく。 ロイも、ここにいるだれもが。軍すら。予想していなかったことで。 予想していなかった、と言ってしまうといいすぎかもしれないがこんな急展開を見せるとはさすがに思っていなかった。 「大将」 「答えろ」 封筒を持つ手が震えた。 中途半端な予測は返って恐い。憶測は当てにならない。 でもその予想はそうそう外れてもいないのだろう。 なら、恐ろしい予想をしてしまう前にせめて現実を。 もう戻せないその『過去』を。 受け入れるしかできないその事実を叩きよこせ。 「どういうことだ!!」 PR |
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