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長編
シリアス・オリキャラ有り 紋章の入った銀時計。それを持つことを許されている人間は、一握り。 ある意味で、常識の範囲を超えた人間の証明。 エドワードがこれを見せたくなかった理由は、実はまだあった。 国家錬金術師は、いわば国の最終兵器。 戦場に行くということは、それこそ名の通り、リーサルウェポン。 錬金術師は、人に死をもたらすためにあるのではないのに。 錬金術師である自分はそう思うが、望む望まないに関わらず、その状況において身を守るために戦うしかない人々はたくさんいて。 そのひとにとっては特技や職業は関係なくなる。ただのひとになる。 そのときにはやはり錬金術師は脅威の存在となるが。 そのひとの争いの中、ひとりのひととして見た場合脅威な者となる人物が、口を出しに来ることを、大尉は快く思わないに決まっている。 思うはずだ。口を出すくらいなら何かをしていけと。 言葉にするだけなら、なんと簡単なことか。 「上層部からの、指令か」 「一応ね」 エドワードは答えると、トランクを開けた。 詰め込まれた中から、封筒を取り出す。 そしてその中から一枚を選び出す。 「正式書類」 ロイがこれまたご丁寧に用意してくれたものだった。 銀時計と同じ、大総統府の紋章の入った書類だ。 最後に、ロイ・マスタングの名が記されていた。 「…鋼の錬金術師。エドワード・エルリック」 書類を突き出すと同時に名乗った。 「…鋼の?」 「文句ある?」 ローランドはそれから少しして、納得したようだ。 うわさで聞いていたエドワードの容姿と、実際目の前にいる姿が一致したらしい。 「それは、ご苦労なことだな」 「まあ、仕事だから。それにその言葉はまんまあんたに返すよ」 エドワードは書類を再び封筒にしまう。 「もう知っているようだが、名乗っておく。私はブライアン・ローランドだ」 エドワードは右手を持ち上げた。手は、額へ。 軍属として、前に立つ。だからこそ敬礼をした。 「それで?あちこちこそこそ回って、帰るのか」 「別にこそこそしちゃいないよ。普通にしてたし。…ここ以外は」 「そうだろうな。それで?報告はできそうか?」 「それはあんたが一番分かってるんじゃないのか?さっき言ってた通りだろ」 ローランドだっていい報告をしたい。エドワードだってそうだ。 それは、共通の見解。 やや、状況は悪いか。 進展しなければ、よい報告なんてありはしない。 「この状況が一ヶ月だ。そろそろ、動く」 「だろうな」 「この状況を報告して、どうなるとも言えないだろう」 「また行けって言われるのはヤだけど」 もともとそんな気は毛頭ないが。 ローランドにしても、自分が来て一ヶ月。いい加減にどうにかしなければならないところに来ている。 「大尉」 会話を割るように、声がした。聞き覚えのある声だった。 ファウツだった。 「指示はすべて出しました。第二小隊は十五分後に集まります」 「分かった。しかし報告だけなら別に人をやればいいだろう?君は中尉なのだから」 走ってきたファウツを見て、ローランドはそう言った。 「はい。…しかし、指示を受けたのは私だったので…。小隊を動かすということもありますし」 「私は別に構わないが」 「はい…?」 語尾がおかしかったのは、エドワードとアルフォンスに気づいたからだ。 「君たちは…さっきの」 「…ども」 「何故ここに…さっき早く」 「ファウツ中尉」 驚いているファウツの言葉をローランドが遮った。 「国家錬金術師殿だ。視察に来られたのだよ」 「え…?国家…。国家錬金術師!?」 エドワードにしてみれば見慣れたリアクションだった。 やれやれというようにエドワードは頭をかいた。 「それは…!先ほどは失礼致しました!!」 やはり予想通り、深々と頭を下げられた。 「私はカール・ファウツと申します」 「…エドワード・エルリック」 「鋼の錬金術師殿だ」 「聞いたことが」 一般市民も知っているものが多い。ファウツは中尉の階級にいる人物だ。聞いたことはあるだろう。 「本当に、そうとは知らず。とは、言え」 「いや別に。誰だか何てわかるはずないし」 「しかし…」 ファウツが困っている。 エドワードにしてみればそんなに堅苦しくなる必要もないのに、と思う程度だ。 それでもどう声をかけたところで、この状態ではすんなり分かってもらえそうもない気がした。 その横から、やんわりとローランドが声を出した。 「それで?術師殿はすぐここを発つのか?茶をしていくか?私と話をするか?話は、時間があまりないが」 「茶は、遠慮する。話ったって、軍人に召集かけてんだろ?ならそれも無理じゃねえか」 「そうだな」 話すことは、ないのだ。もう。 「そう急かずとも、近日中にいい報告をする」 ローランドは言い切った。 負けるつもりなど毛頭ない。 自分は結果を出すために。手柄を立てるためにここへ来た。そう、ここにいるのだ。 「…とでも伝えてもらえまいか」 「自信あるんだな」 「自信がなくては、こんなところにはいられない」 それは、そうかもしれない。 心のどこかでそう思った。 ロイならは、もっと分かるはずだ。 そうなのか、そうではないのかも。 もっと黒いものを沢山見てきた男だから。 できれば、一生知りたくない世界。 「…あの、大尉」 「何だい?」 「あの、国家錬金術師殿に対して、その」 エドワードは視線をファウツに向ける。 アルフォンスも、ファウツが言わんとしていることが分かった。 別に、エドワードはそんなことを気にはしないが。 初対面の国家錬金術師に対しての、態度だ。 「オレはそーいうの、気にしないんでね」 相手からしてみたら随分年齢の低い相手だ。そういう気持ちになれない場合も大いにあるだろう。 「オレはいいけど、そーいうのを気にする奴もいるのかもしれねえけど」 それもまた事実だ。 「てな訳だから。邪魔して悪かったな。上には、あの言葉伝えとく」 「お疲れ様です」 「そちらさんも。…それじゃ」 ここは戦地。 エドワードは敬意を込めて敬礼した。 戦いに身をおく者に対する。 昨日から来ていた国家錬金術師。 住人からの言葉など、すでに色々聞いているに違いない。 ローランドも上っ面だけの綺麗な言葉を並べる気などなかったが、これ以上言葉は要らないだろうと思っただけのことだ。 そしてそれは、エドワードも。 エドワードとアルフォンスの姿が見えなくなってから、ローランドは歩き出した。 「さて、急なお客人もお帰りだ。私は小隊の元へ行くよ」 「はい…」 エドワードが来たと言うことは、軍は結果を求めているのだと、ファウツも分かった。あの時の会話を聞いていなくとも。 「しかし…大尉があのような態度を取るとは思いませんでした」 「何がかな」 「国家錬金術師殿に対して、です。確かに背丈もあまりない、本当に『少年』でしたが」 しかし、それと同時にただの少年ではないことも分かっている。 最年少の国家資格保有者。 それだけの、国の逸材。 そして、少佐相当官の持ち主。 「あのシステムだけは、どうもあまり納得いかないのだけどね、私は」 「は?」 「ああ、聞き流してくれよ。それだけの期待に応えられるものなのかな、国家錬金術師とは。まあ錬金術の使えない私の戯言なのだろうが」 大尉、というこの位に就くために、どれだけ自分はやってきたのだろう。 そして、一般人にしてみれば錬金術は羨望の眼差し。これは事実。 多様な期待の持てる化学技術。 さらに国家資格を取るほどの人物なら、恐らくはそれ以上の。 しかし、それで少佐相当とは。 あの少年が、少佐相当とは。 「僻みにしか聞こえないな…」 笑うしか出来ない。 大人の自分が、あんな少年にそんな思いを抱くとは。 ならば、上り詰めればいい。 まずはその位まで、あと一つ。 ここで結果を残せば、尉官から左官になれるかもしれない。 これだけ大きな仕事を。任務をこなせば。 分かりやすい。 実力で上れば、誰にも文句も言わせない。 堂々と歩いて。 「いきなり不法侵入してきたのでね。次に会うときは、きちんと大人の態度を取ろう」 エドワードだって軍属だ。二度と会わないかもしれないが、会う可能性だって大いにある。 もしも、いつか。 また会うときが来たら。 そのときは。 PR |
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